「Microsoft 365 Business BasicとStandardのどちらを選べばいい?」――中小企業の情シス担当や経営者なら、一度はこの問いに直面したことがあるはずです。月額899円と1,874円(2026年6月現在・税抜)の差は、10人規模の会社なら年間で約12万円の違いになります。この記事では、両プランの機能差を実務視点で整理し、「どういう会社はBasicで十分か」「Standardに投資すべき条件は何か」を明確にします。結論を先に言うと、デスクトップ版OfficeアプリをPCにインストールしたいならStandard一択。クラウドとWeb版で完結するならBasicで十分です。
Microsoft 365 Business BasicとStandardの基本情報
2026年6月時点の料金と2026年7月改定後の新料金
まず現在の料金と、2026年7月1日からの改定後料金を整理します。
| プラン | 現行料金(〜2026年6月) | 改定後料金(2026年7月〜) | 値上げ幅 |
|---|---|---|---|
| Business Basic | 899円/ユーザー/月(税抜・年契約) | 1,049円/ユーザー/月(税抜・年契約) | 約+16.7% |
| Business Standard | 1,874円/ユーザー/月(税抜・年契約) | 2,099円/ユーザー/月(税抜・年契約) | 約+12.0% |
価格改定の理由は、AIアシスタント「Copilot Chat」の標準搭載と、セキュリティ・管理機能の強化です(Microsoft公式プラン比較ページ)。既存契約は2026年7月1日以降の最初の契約更新日から新価格が適用されます。
10人規模での年間コスト試算:
- Basic(改定後):1,049円 × 10人 × 12ヶ月 = 125,880円/年
- Standard(改定後):2,099円 × 10人 × 12ヶ月 = 251,880円/年
- 差額:約12.6万円/年
両プランに共通して含まれる機能
まず「どちらを選んでも使える機能」を把握しておくことが重要です。以下はBasic・Standard共通です:
- Exchange Online(メールボックス50GB・独自ドメイン対応)
- SharePoint Online(社内ファイル共有・イントラネット)
- OneDrive for Business(1TBのクラウドストレージ)
- Microsoft Teams(チャット・ビデオ会議・ファイル共有)
- Word・Excel・PowerPoint・Outlook のWeb版・モバイル版
- Microsoft Entra ID(旧Azure AD)によるシングルサインオン
- Copilot Chat(2026年7月改定後に標準搭載)
BasicとStandardの決定的な違い:デスクトップアプリの有無
Standardだけに含まれる機能
Business StandardがBasicと異なる最大のポイントは、Word・Excel・PowerPoint・Outlook・Access・Publisherなどのデスクトップ版アプリがインストールできることです。
| 機能 | Basic | Standard |
|---|---|---|
| Officeデスクトップアプリのインストール | × | ○(最大5台のPC/Mac) |
| Officeモバイルアプリ | ○ | ○ |
| OfficeウェブアプリWeb版 | ○ | ○ |
| Clipchamp(動画編集) | × | ○ |
| Microsoft Loop | ○ | ○ |
| Webinar機能(Teams) | × | ○(1,000名まで) |
| カスタムブランドのメールマーケティング | × | ○(Customer Voice等) |
※出典:Microsoft公式プラン比較
Web版Officeの実用上の制限
「Web版で十分では?」と思う方のために、実務上の限界を正直に書きます。
- マクロ(VBA)が使えない:Excelの自動化処理や既存の業務マクロはWeb版では動作しません
- 高度な書式・図形機能が一部非対応:複雑なPowerPointのアニメーション設定や、細かい書式調整がWeb版では制限されることがあります
- オフライン作業が基本できない:インターネット接続が前提のため、外出先の低速回線環境では作業効率が落ちます
- 既存の.xlsm/.docmファイルとの互換性:マクロ含みファイルは開けますが編集・実行は不可
これらの制限が業務に影響するかどうかが、BasicかStandardかを決める実質的な判断軸です。
独自試算:どちらがコスト的に合理的か(規模・用途別)
シミュレーション:5人・10人・30人規模での年間コスト比較
以下は改定後料金(2026年7月〜)ベースの試算です。
| 規模 | Basic年額(税抜) | Standard年額(税抜) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 5名 | 62,940円 | 125,940円 | 63,000円 |
| 10名 | 125,880円 | 251,880円 | 126,000円 |
| 30名 | 377,640円 | 755,640円 | 378,000円 |
30名規模でBasicを選べば、Standardとの差額は年間約37.8万円。この費用で別のSaaSを1〜2本追加導入できます。一方、全員がExcelマクロを使う経理・製造業では、StandardなしではOffice 365 E3相当の機能が必要になり、かえってコストが上がるケースもあります。
「隠れコスト」の落とし穴:Standardを選ばないと追加費用が発生するケース
Basicを選んだ後に発覚しがちな追加コストをまとめます:
- デスクトップ版Officeを別途購入:Microsoft 365を契約していても、BasicではOffice永続ライセンスが別途必要な場合があります(Microsoft Office Home & Business 2021は約38,000円/台)
- 外部向けウェビナー開催が不可:Teamsのウェビナー機能はStandardのみ。BasicユーザーはZoomなどの別サービス契約が必要
- Clipchampが使えない:社内動画制作ニーズがある場合、動画編集ツールの別契約が発生
こういう会社はBasicを選ぶな:StandardかBasicかの判断基準
Basicで十分な会社の条件
以下の条件をすべて満たすなら、BasicでROIが出ます:
- 全社員がExcelマクロ・VBAを使っていない(または不要)
- 既存のPCにOffice 2019/2021等の永続ライセンスが入っており、引き続き使える
- 外出先でのOffice作業はスマホ・タブレットのモバイル版で対応できる
- 外部向けウェビナー開催の予定がない
- クラウド中心の業務フロー(書類はGoogleドキュメント等で対応しているケースも含む)
Standardを選ぶべき会社の条件
次の1つでも当てはまれば、Standardを選ぶべきです:
- ExcelマクロやVBAを業務で使っている(会計、在庫管理、レポート自動化など)
- 新しいPCにOfficeを入れる必要がある(永続ライセンスを別途購入するよりStandardのほうが安い場合が多い)
- 外部向けウェビナー・セミナーを定期開催している
- 複雑なWordテンプレートや精密なPowerPoint資料を作る業務がある
- インターネット接続が不安定な現場での業務がある(製造現場、店舗、倉庫など)
特に「新PCにOfficeを入れるため別途ライセンスを購入している」会社は注意が必要です。Microsoft Office 2021の個人向け永続ライセンス(約38,000円)をStandardとBasicの差額(年間約12,600円/10人規模)で比較すると、3年間でStandardの差額が約37.8万円、15台分のPCにOfficeを入れるコストが約57万円になります。台数が多い場合はStandardのほうが割安になる可能性があります。
よくある失敗・導入後に後悔したパターン
「Basicにしたが結局デスクトップOfficeが必要だった」問題
最も多い失敗パターンです。社内の一部メンバーだけExcelマクロを使う場合、全員をStandardにするのが割高に感じてBasicにしたものの、マクロユーザーのためにOffice単体ライセンスを別途購入し、結果的にコストが上がるケースがあります。
対策:マクロ利用者だけStandard、それ以外をBasicの混在ライセンス契約を検討してください。Microsoft 365では同一テナント内で異なるプランを混在させることが可能です。
「Web版で十分だと思っていたが印刷・書式が崩れた」問題
特にWordを使った請求書・契約書テンプレートで、Web版で編集するとレイアウトが崩れて印刷に支障が出るケースが報告されています。既存のWordテンプレートを多用する業種(士業、不動産、建設など)ではStandardを推奨します。
「Teamsのウェビナー機能が使えないとわかった」問題
Basicで契約後、社内のオンラインセミナー開催時にウェビナー機能がないことに気づき、Zoomの有料プランを追加契約した事例があります。外部参加者向けのオンラインイベントを予定している場合は事前確認が必要です。
移行・プラン変更の手順と注意点
BasicからStandardへのアップグレード
Microsoft 365管理センター(admin.microsoft.com)からプランのアップグレードが可能です。基本的に以下の手順で進めます:
- Microsoft 365管理センターにサインイン
- 「課金情報」→「お客様の製品」から現在のプランを確認
- 「サービスを購入する」からBusiness Standardを選択
- 既存ユーザーのライセンスを割り当て直す
データの移行は不要です。SharePoint・OneDrive・Teams上のデータはそのまま引き継がれます。アップグレード後、各PCでデスクトップ版Officeのインストールが別途必要になります(管理センターからインストーラーをダウンロード)。
StandardからBasicへのダウングレード
ダウングレードは契約更新時のみ可能なケースが多く、年契約の途中解約・変更には制約があります。また、デスクトップ版OfficeはBasicへの変更後一定期間でライセンス切れとなり、読み取り専用モードになります。ダウングレード前に必ずOfficeデスクトップアプリの利用状況を確認してください。
まとめ:どちらを選ぶべきか1分で判断する
最後に、判断フローをシンプルに整理します。
- 「Excelマクロを使うメンバーがいる」→ Standard(またはそのメンバーだけStandard)
- 「PCにOfficeを新規インストールする予定がある」→ Standardのほうがコスパ良い場合が多い
- 「メール・Teams・クラウドストレージが中心で、Officeは閲覧・軽編集のみ」→ Basicで十分
- 「2026年7月の値上げ前に契約更新できる」→ 今すぐ年契約に切り替えると1年間は現行料金が適用される
Microsoft 365の選び方で迷ったら、ビジネスチャットやグループウェア全体の見直しも一緒に行うのが効率的です。チャットツールの比較については「ビジネスチャットツール比較|Slack vs Teams vs Chatwork」、チーム全体のコミュニケーション基盤を再構築したい場合は「10人以下で使える無料グループウェア比較」もあわせてご覧ください。また、Microsoft Teams単体の無料版でできることを知りたい方は「Microsoft Teams無料版でできること2026」も参考にしてください。

