Shopifyで独自ドメインを接続できない原因の大半は、DNSのAレコード・CNAMEが公式指定の値になっていないか、古いレコードが残ったままのどちらかです。設定自体は3レコードを直すだけで終わりますが、反映に最大48時間かかる仕様のため「直したのに反映されない」と誤解して触りすぎ、かえって時間を失うケースが目立ちます。この記事では、自社ECを立ち上げる中小企業の担当者向けに、症状別の切り分け、公式が指定しているレコードの正解値、SSL保留中が解けないときの原因までを実務手順としてまとめます。
まず切り分ける:「接続できない」は3つの症状に分かれる
同じ「接続できない」でも、Shopify管理画面のどこで止まっているかによって原因はまったく違います。ここを混同したまま設定を変え続けるのが、いちばん時間を溶かすパターンです。
症状A:ドメインを追加した時点で弾かれる
[設定]>[ドメイン]>[既存のドメインを接続する]でドメイン名を入れた直後にエラーになる場合は、DNSの中身ではなくドメインの所有・利用状態が原因です。他のShopifyストアに接続済み、ドメインの有効期限切れ、レジストラ側でロックがかかっている、といったケースがここに入ります。
症状B:追加できたが「保留中」のまま進まない
ドメイン一覧に載ったものの、ステータスが「保留中」「SSL保留中」から変わらないパターンです。これはDNSレコードの値の誤り、古いレコードの残存、証明書発行を妨げる設定(後述のCAAレコードやDNSSEC)が主な原因になります。実務で最も多いのがこの症状です。
症状C:接続済みなのにサイトが表示されない・SSL警告が出る
接続は完了しているのに、ブラウザで「保護されていない通信」と出たり、www付き・なしのどちらかだけ表示されない場合です。CNAMEの設定漏れか、証明書がまだ発行されていない過渡期であることがほとんどで、追加の設定より待機で解決することが多い症状です。
公式が指定しているDNSレコードの正解値
サードパーティで取得したドメイン(お名前.com、ムームードメイン、Google Domains系など)をShopifyへ手動接続する場合、レジストラのDNS設定画面で次の3レコードを設定します。値はShopify公式ヘルプ「ドメインを手動で接続する」に記載のとおりです(2026年8月確認)。
設定する3レコードと値
| レコード種別 | ホスト名 | 設定する値 |
|---|---|---|
| A | @(ルート) | 23.227.38.65 |
| AAAA | @(ルート) | 2620:0127:f00f:5:: |
| CNAME | www | shops.myshopify.com.(末尾のピリオドを含む) |
つまずきやすいのはCNAMEの末尾のピリオドです。レジストラによっては自動で付与されますが、手入力で省くと名前解決に失敗します。またAAAAレコードは、短縮形を受け付けないDNSサービスでは 2620:0127:f00f:0005:0000:0000:0000:0000 と展開形で入力します。なお公式ヘルプには、接続後に地域に応じてIPアドレスの末尾が別の値へ変わる場合があると明記されています。管理画面が別のIPを案内してきたときは、記事や他社ブログの値ではなく、自社の管理画面に表示された値を正としてください。
既存レコードを残すと不安定になる
公式ヘルプは、Shopifyを指すA・AAAAレコードを設定する際に既存のA/AAAAレコードをすべて削除するよう指示しています。前のサーバーやドメイン取得時の初期設定でレコードが残っていると、アクセスのたびにどちらかへ振り分けられ、「表示されるときとされないときがある」という再現性の低い症状になります。切り分けが一気に難しくなるため、まず余計なレコードを消し切るのが先決です。ワイルドカード(*.example.com)のレコードがShopifyを向いている場合も、同様に不安定の原因になります。
ネームサーバーを変更している場合は先に戻す
レジストラ以外のDNSサービス(Cloudflareなど)へネームサーバーを移している場合、公式ヘルプでは接続前にレジストラ既定のネームサーバーへ戻すよう案内されています。どうしても外部DNSを使い続けたい場合は、そのサービス側で上記3レコードを設定する形になりますが、切り分けの手数が増えるぶん初回は既定に戻すほうが早く終わります。
【一次情報】お名前.com・ムームードメインは入力欄の仕様が違う
Shopify側が指定する値そのものは共通ですが、実際に手が止まるのはレジストラごとの入力欄の仕様差です。国内の中小企業で利用の多い2社について、各社の公式ヘルプに明記されている制約を確認しました(2026年8月時点)。
| レジストラ | 公式ヘルプに明記されている制約 | Shopify接続で効いてくる点 |
|---|---|---|
| お名前.com(DNSレコード設定) | A・MX・TXT・SRVレコードはホスト名を空白にすればドメイン名のみで設定できる。一方、CNAME・NSレコードはホスト名を空白または「@」にした形では設定できない | ルート宛のAレコード(23.227.38.65)はホスト名を空白で登録する。CNAMEは必ず「www」を入れる |
| ムームードメイン(ムームーDNSカスタム設定) | サブドメイン欄に大文字は使えず、使用できる記号は「-」「_」「.」のみ。先頭に「.」、末尾に記号は使用不可 | 「WWW」と大文字で入力すると弾かれる。CNAMEはサブドメイン欄(www など)の入力が前提になる |
CNAMEを「@」で登録しようとしてエラーになるのは、値が間違っているのではなくその書き方自体を受け付けない仕様だからです。ルートドメインをShopifyへ向けるのはA/AAAAレコードの役割、CNAMEはwww側だけ、と役割を分けて考えると迷いません。出典:お名前.comヘルプ「ドメイン名のみでレコード設定は可能?」/ムームードメイン ヘルプ「ムームーDNSカスタム設定」。
なお、レジストラ側でネームサーバーを他社へ変更していると、ここで説明した入力欄そのものが使われません。「設定したのに反映されない」ときは値を疑う前に、いまどのDNSサーバーが実際に参照されているかを先に確認してください。
【独自整理】症状×原因×最初にやることの早見表
問い合わせを受けたときに上から順に潰していける形で整理しました。原因の切り分け順序は編集部で整理したものです。
| 症状 | よくある原因 | 最初にやること |
|---|---|---|
| 追加した瞬間にエラー | 他ストアに接続済み/期限切れ | レジストラで有効期限とロック状態を確認。所有権の証明手続きへ進む |
| 保留中から動かない(24時間未満) | 反映待ちの可能性が高い | レコードの値だけ確認し、あとは触らずに待つ |
| 保留中から動かない(48時間超) | 値の誤り/古いレコード残存 | A・AAAA・CNAMEを1件ずつに整理し、余分なレコードを削除 |
| SSL保留中のまま | CAAレコード/DNSSEC/プロキシ | CAAを確認し、DNSSECとCloudflareプロキシを無効化 |
| wwwありだけ/なしだけ表示 | CNAME未設定または誤り | wwwのCNAMEをshops.myshopify.com.へ設定し直す |
| 表示されたりされなかったり | A/AAAAレコードの重複 | Shopify以外を指すA・AAAAをすべて削除 |
SSL保留中から進まないときの3つの原因
DNSの値は正しいのに証明書だけ発行されない場合、原因は証明書発行を妨げる別の設定にあります。Shopify公式のドメイントラブルシューティングで挙げられている代表例は次の3つです。
1. CAAレコードが認証局をブロックしている
CAAレコードは「このドメインの証明書を発行してよい認証局」を制限する仕組みです。ここにLet’s Encrypt・Google・SSL.comが含まれていないと、Shopifyが証明書を取得できず保留のまま止まります。CAAを設定した覚えがなくても、DNSサービス側の初期値で入っていることがあるため確認が必要です。セミコロンを含む記述(発行を一切許可しない指定)が入っているケースもあります。
2. DNSSECが有効になっている
レジストラでDNSSECを有効にしていると、接続に失敗することが公式に案内されています。セキュリティ設定として良かれと思って有効化していることが多いため、心当たりがなくても管理画面で状態を確認してください。
3. Cloudflareのプロキシが有効になっている
CloudflareでDNSを管理し、プロキシ(オレンジ色の雲アイコン)を有効にしていると、Shopify側からは実際の接続先が見えず警告が出ます。プロキシをオフ(グレーの雲=DNSのみ)にするのが基本対応です。
【独自試算】「待てない」がいちばん高くつく|手戻りコストの目安
公式ヘルプはDNSの変更がグローバルに伝播するまで最大48時間かかると明記しています。ところが実務では、数時間で反映されないと「設定が間違っている」と判断して値を変え直すケースが非常に多くなります。これがどれだけ損かを編集部で試算しました。
| 対応方針 | 担当者の作業時間 | 解決までの実時間 | 人件費換算(時給3,000円) |
|---|---|---|---|
| 値を確認したら48時間待つ | 15分(初回設定のみ) | 最大48時間 | 約750円 |
| 反映しないと感じて3回触り直す | 約60分+確認の中断多数 | 最終変更からさらに最大48時間 | 約3,000円+中断コスト |
触り直すたびにキャッシュされる値が上書きされるため、解決時刻は「最後に触った時点」から数え直しになります。作業時間そのものより、翌日に持ち越すはずだった案件が読めなくなることのほうが痛手です。設定直後にやるべきなのは値の再入力ではなく、レコードが1件ずつだけ存在しているかの確認です。
ありがちな失敗3つ
- 失敗1:レジストラの「転送設定」と併用する——ドメイン転送やURLフォワーディングを残したままAレコードを向けると、意図しないリダイレクトが挟まります。Shopifyへ接続するなら転送設定は解除しておきます。
- 失敗2:wwwなしをメインにしたいのにCNAMEを省く——wwwなしをプライマリにする場合でも、www側のCNAMEは設定しておくのが安全です。片方だけ表示されない事故の大半はここです。
- 失敗3:既存サイトを稼働させたまま切り替える——旧サイトを止めずにAレコードを変えると、伝播の途中で新旧が混在します。切り替え前にTTLを短くしておくと、戻したいときの復旧も速くなります。
よくある質問(Shopifyのドメイン接続)
Shopifyでドメインを購入した場合もDNS設定は必要ですか?
Shopify管理画面から購入したドメインは自動で接続されるため、手動でのレコード設定は不要です。DNSを自分で触る必要があるのは、外部のレジストラで取得したドメインを接続する場合です。「設定が難しそう」という理由だけなら、Shopify側で取得してしまうのも合理的な判断になります。
「This domain is already connected to another Shopify store」と表示されます
そのドメインが別のShopifyストアに接続されたままの状態です。公式ヘルプでは、この場合にドメイン所有権の証明手続きを行うよう案内されています。テスト用ストアで一度接続した経験がある場合は、まず旧ストア側で接続を解除するほうが早く済みます。
サブドメイン(shop.example.com)で運用したい場合は?
コーポレートサイトを残したままECだけ切り出す構成では、サブドメインのCNAMEをshops.myshopify.com.へ向ける形になります。ルートドメインのA/AAAAレコードは触らないため、既存サイトを止めずに移行できるのが利点です。社内の別サービスで独自ドメインを使っている場合の考え方は、Google Workspaceの独自ドメイン設定手順やMicrosoft 365で独自ドメインメールを設定する手順とあわせて、1つのドメインをどのサービスに割り当てるかを先に整理しておくと衝突を防げます。
まとめ:値を直したら48時間触らないのが最短ルート
Shopifyで独自ドメインを接続できないときは、①症状がどこで止まっているかを切り分け、②A(23.227.38.65)・AAAA(2620:0127:f00f:5::)・CNAME(shops.myshopify.com.)を1件ずつだけ設定し、③余計なレコードと転送設定を消す、この3つで大半が解決します。SSL保留中が続く場合だけ、CAAレコード・DNSSEC・Cloudflareプロキシを追加で確認してください。あとは最大48時間の伝播を待つだけで、途中で設定を触り直さないことが結果的にいちばん速く終わります。ツール選定そのものを見直す段階なら、SaaS選び方ガイド|失敗しないための7つのチェックポイントの判断軸も参考にしてください。

