TrelloからNotionへ移行する手順は、「①Trello側でJSONバックアップを取る → ②Notionの公式インポーターでボードを取り込む → ③移らなかった要素をNotion側で作り直す」の3段階で考えると失敗しません。Notionの公式インポーターはボード・リスト・カードをそのままデータベースへ変換してくれますが、Power-Upやオートメーション、権限設定は移行の対象外です。この記事では、中小企業の情シス・バックオフィス担当者向けに、移行すべきかどうかの判断基準から、実際のインポート操作、移行後に必ず発生する再構築作業と所要時間の目安までを、公式ドキュメントにもとづいて整理します。
先に結論を言うと、移行の目的が「Trelloの料金を下げること」なら、Notionへの移行はほぼ割に合いません。10人規模で比較するとNotionの有料プランのほうが高くつくためです。移行が効くのは、タスク・議事録・社内Wikiがツールごとに散らばっていて、その集約に価値がある場合に限られます。この前提を最初に共有したうえで、手順を見ていきます。
TrelloからNotionへ移行すべきか|判断の3基準
移行作業そのものは数時間で終わりますが、移行後の運用ルールづくりには数週間かかります。着手する前に、次の3点で費用対効果を確認してください。
基準1:Trello無料プランの「10ボード」上限に当たっているか
移行を検討する最も多いきっかけが、Trello無料プランのボード数上限です。Trello公式の料金ページによると、無料プランは1ワークスペースあたり10ボードまで、カードは無制限、添付ファイルは1ファイル10MBまで、オートメーション(Butler)は月250回までとされています。ボードが11枚目に到達した時点で、有料化するか運用を見直すかの分岐が来ます。
この上限の詳しい中身と、有料化せずに回避する運用の工夫はTrello無料プランの制限まとめ|ボード10枚の上限と対処法で整理しています。まずはそちらで「本当にボードを減らせないか」を検討してから、移行の判断に進むのが順序として正しいやり方です。
基準2:【独自試算】10人チームの年間コストで比べる
「有料化するくらいならNotionへ」と考える前に、実際の金額を並べてみます。2026年8月時点の公式料金にもとづき、10人チームで使う場合の年額を編集部で試算しました(Trelloの米ドル建て料金は1ドル150円換算・年払い、NotionはNotion公式の料金ページの月払い価格を使用)。
| プラン | 1人あたり月額 | 10人の年額(概算) | ボード/ページ数 |
|---|---|---|---|
| Trello Free | 0円 | 0円 | 10ボードまで |
| Trello Standard | 約750円(5ドル) | 約90,000円 | 無制限 |
| Trello Premium | 約1,500円(10ドル) | 約180,000円 | 無制限+複数ビュー |
| Notion フリー | 0円 | 0円 | 2名以上はブロック数に上限あり |
| Notion プラス | 1,650円(月払い) | 約198,000円 | 無制限 |
Notionは年払いで最大20%割引になるため実際はこれより下がりますが、それでもTrello Standardのほうが安いという関係は変わりません。つまり、Notionへの移行は「コスト削減策」ではなく「情報の集約策」です。稟議で費用対効果を説明するときは、削減額ではなく「ツールを1つに減らすことで浮く運用工数」を根拠にしないと、途中で説明が破綻します。
なお、Notionのフリープランは1人で使う場合はブロック数が無制限ですが、メンバーが2名以上のワークスペースでは上限があります。上限に当たったときの対処はNotion無料プランのブロック制限に達したときの対処法にまとめています。「無料のまま10人で使う」前提の移行計画は、この上限で行き詰まりやすい点に注意してください。
ブロック数以外にも、フリープランにはファイルアップロードの容量、ページ履歴の保存期間、外部ゲストの人数といった上限があります。Trelloの添付ファイルや取引先メンバーごと移す予定なら、Notion無料プランの制限まとめで有料化の判断軸とあわせて確認しておくと、移行後の手戻りを防げます。
基準3:移行しないほうがよいケース
次のいずれかに当てはまるなら、移行は見送るか、時期をずらすほうが賢明です。
- Butlerによる自動化が業務に組み込まれている:オートメーションはインポートされないため、移行と同時に全部作り直しになります。
- Power-Upで外部サービスと連携している:Power-Upも移行対象外です。連携の再設計コストが移行効果を上回りがちです。
- カンバンの単純さが現場に定着している:Notionはできることが多い分、設計の自由度が高く、運用ルールを決めないと使われなくなります。カンバンだけで足りているチームは、Trelloのままが合理的です。
逆に、議事録・手順書・案件管理がスプレッドシートとTrelloに分散していて、それを1か所にまとめたいのであれば、移行の効果は大きくなります。
移行前にやるバックアップとボードの棚卸し
インポートは元のTrelloボードを消しませんが、移行後に「あの情報どこ行った」となる事故を防ぐため、先にバックアップと棚卸しを済ませます。ここを飛ばすと、移行後の検証で必ず時間を取られます。
JSONエクスポートは全プランで可能・CSVはPremium限定
Trello公式ドキュメントによると、ボードのJSON形式エクスポートはすべてのボードメンバーが実行でき、CSV形式のエクスポートはPremiumワークスペースのボードに限られます。無料プランで使えるのはJSONだけと覚えておけば十分です。
ただし公式は同時に、JSONエクスポートに含まれるのはボード上の直近1,000件のアクション(コメントを含む)までと明記しています。長期運用しているボードでは、古いコメントがバックアップから漏れる可能性があるということです。過去のやり取りを証跡として残す必要があるボードは、移行前にスクリーンショットやページ書き出しで別途保全してください。
JSONもCSVもTrelloには戻せない
公式は「JSONやCSVの形式をインポートしてTrelloボードを再作成することは現時点ではできない」としています。つまりエクスポートファイルは「読むための控え」であって、ロールバック手段ではありません。移行がうまくいかなかった場合の切り戻しは、元のTrelloボードをそのまま残しておくことで担保します。移行後すぐにTrelloを解約しないでください。
移行対象を絞る棚卸しをする
全ボードをそのまま移すのは悪手です。移行は、使っていないボードを捨てる数少ない機会でもあります。次の3分類で仕分けてから、インポート対象を決めてください。
- 移行する:現在進行中の案件・継続タスク(実務ではボード全体の3〜4割程度に収まることが多い)
- アーカイブのみ:完了案件。JSONを取ってTrello側でアーカイブし、Notionには入れない
- 作り直す:運用が形骸化しているボード。移行せず、Notionで設計からやり直す
NotionのTrelloインポーターで移行する手順
棚卸しが終わったら、Notion公式のインポーターを使います。Notion公式ヘルプに沿った操作手順は次のとおりです。
手順1:設定>インポート からTrelloを選ぶ
サイドバーの[設定]→[インポート]→サードパーティのインポート→[Trello]と進みます。任意のページでスラッシュコマンド「/Trello」を入力してインポートを選ぶ方法もあり、既存のページ配下に取り込みたい場合はこちらが早いです。
続いてTrelloアカウントでログインし、Notionにアクセスを許可します。ここで許可を出すのはAtlassianアカウント側の操作になるため、Trelloの管理権限を持っていない担当者だけでは完結しません。移行担当を決める段階で、Trello側の権限も確認しておいてください。
手順2:ボードを選び、取り込み先を決める
ドロップダウンから移行したいボードを選び、取り込み先(チームスペース/プライベートスペース/既存のデータベース)を指定します。公式はワークスペース全体の一括移行には対応しておらず、ボード単位のインポートになると説明しています。棚卸しでボードを絞っておく意味はここにあります。
取り込み先は、最初はプライベートスペースにしておくのが安全です。そのままチームスペースに入れると、整形前の状態が全員に見えてしまい、「散らかっている」という第一印象がついて定着を妨げます。
手順3:ボード=データベースへの変換結果を確認する
インポートが完了すると、公式の仕様どおり次のように変換されています。
- ボード → Notionのデータベース
- リスト → データベースのグループ(ボードビューの列)
- カード → データベースのアイテム(1件が1ページ)
公式は1ボードあたりカード5,000枚程度まで、コメントは5,000件程度までを目安とし、それを超える大きなボードは事前に分割することを推奨しています。長期運用の巨大ボードをそのまま流し込むと、コメントの欠落リスクがあるということです。Notionのデータベースの基本的な考え方が不安な場合は、Notionデータベースの使い方でプロパティとビューの関係を先に押さえておくと、移行後の整形がスムーズになります。
【独自整理】移行できるもの・できないものの対応表
公式ヘルプは「ボード・リスト・カードとして表現できないTrelloのコンテンツは移行されない可能性がある」という書き方をしており、個別要素の可否が一覧になっていません。実務で確認すべき項目を、移行後にやることまで含めて表に整理しました。社内の移行計画書にそのまま貼れる粒度でまとめています。
| Trelloの要素 | Notion側での受け皿 | 移行後にやること |
|---|---|---|
| ボード | データベース | 名前とアイコンを整える |
| リスト | ボードビューのグループ | ステータスの並び順を調整 |
| カード | データベースのアイテム(ページ) | 本文の見出し崩れを確認 |
| コメント | ページ内コメント(件数が多いと欠落リスク) | 重要スレッドの残存を目視確認 |
| Power-Up | 移行対象外 | Notionの連携・APIで作り直す |
| オートメーション(Butler) | 移行対象外 | Notionのオートメーションで再設計 |
| 権限設定・メンバー | 移行対象外 | チームスペースと共有設定を作り直す |
この表で重要なのは、下3行がすべて「作り直し」だという点です。移行工数の見積もりを誤る原因は、ほぼここにあります。カードの引っ越しは自動でも、運用の仕組みは手作業でしか移せないと考えてください。
権限まわりは最後にまとめて設定する
権限が移行対象外である以上、誰がどこを見られるかはNotion側でゼロから決めることになります。先にメンバーを招待してから整形すると、未完成の状態が見えてしまうため、整形が終わってから招待するのが実務的な順序です。招待の段階でつまずいた場合は、Notionにメンバーを招待できない原因と対処法で権限とプラン側の条件を確認してください。
移行後の再構築と所要時間の目安
インポートは終わりではなく、ここからが本番です。放置すると「Trelloのほうが使いやすかった」という声が出て、二重運用に戻ります。
【独自試算】ボード5枚・カード300枚の移行にかかる時間
10人規模の会社で、移行対象をボード5枚・カード300枚に絞った場合の作業時間を、編集部で工程ごとに見積もりました。
| 工程 | 担当 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 棚卸し・移行対象の決定 | 情シス+各ボードの主担当 | 1〜2時間 |
| JSONバックアップの取得 | 情シス | 15分 |
| インポート実行と待ち時間 | 情シス | 30分〜1時間 |
| プロパティ・ビューの整形 | 情シス | 2〜3時間 |
| オートメーション・連携の再設計 | 情シス | ボードあたり1時間〜 |
| 権限設定とメンバー招待 | 情シス | 1時間 |
| 並行運用と定着確認 | 全員 | 2週間 |
自動化の再設計を除けば、実作業は1営業日で収まる規模です。逆に言えば、Butlerを多用しているチームほど工数が読めなくなります。稟議を出す際は「移行作業1日+並行運用2週間」を基本線にし、自動化の本数を別枠で積むと、見積もりが大きく外れません。
並行運用は「新規はNotion・既存はTrello」で切る
両方を中途半端に使うと情報が二重化します。切り替え日を決め、その日以降に発生したタスクはNotionにしか作らないというルールにするのが最もシンプルです。既存タスクはTrello上で完了させ、自然に空になったらTrelloを閉じます。全件を一斉に移して一斉に切り替える方式は、10人規模でも混乱しやすいためおすすめしません。
ビューはTrelloと同じ見た目から始める
移行直後にテーブルビューやタイムラインを作り込むと、現場は「別のツールになった」と感じて離れます。最初はボードビューだけを表示し、Trelloとほぼ同じ操作感にしておくのが定着のコツです。カレンダーやフィルタは、定着してから足していきます。期限をカレンダーで追う運用に広げるときは、データベースのカレンダービューと、Googleカレンダーの予定と並べて見られるNotion Calendarアプリのどちらを使うかを先に決めておくと迷いません。違いと設定手順はNotionカレンダーの使い方にまとめています。Trello側の運用を整理し直したい場合は、Trelloの使い方入門でカンバンの基本構成を確認しておくと、Notion側の設計にもそのまま流用できます。
よくある失敗3つと回避策
移行で時間を溶かすパターンは、だいたい次の3つに集約されます。
失敗1:全ボードをまとめてインポートする
公式がボード単位のインポートしか用意していないにもかかわらず、20枚以上のボードを片端から取り込むと、Notion側が整理されないまま肥大化します。棚卸しで対象を3〜4割に絞る工程を、必ず先に置いてください。
失敗2:移行直後にTrelloを解約する
JSON・CSVはTrelloに戻せないため、解約後に「あの添付ファイルが必要」となっても取り戻せません。最低でも1か月、できれば四半期はTrelloを残すのが安全側の判断です。無料プランに戻して残しておけば追加コストもかかりません。
失敗3:自動化の再設計を見積もりに入れない
Butlerで「期限が近づいたらラベルを付ける」「完了リストに移したらアーカイブする」といった処理を組んでいる場合、それらはすべて手作業で作り直しです。移行計画の段階でButlerのルール数を数え、1本あたり30分〜1時間で見積もると、着手後の想定外を防げます。
まとめ:移行は「1日の作業+2週間の定着」で計画する
TrelloからNotionへ移行する手順は、JSONでバックアップを取り、Notion公式のインポーターでボード単位に取り込み、移らなかった自動化・連携・権限をNotion側で作り直す、という流れです。ボードはデータベース、リストはグループ、カードはアイテムに変換されるため、タスクそのものの移行でつまずくことはほとんどありません。
判断のポイントは費用ではなく集約効果です。10人規模ではTrello Standardのほうが安く済むため、「安くなるから移る」という説明では稟議は通りません。タスクとドキュメントを1か所にまとめることで、どの作業が何分減るのかを言えるかどうかが、移行の成否を分けます。移行後にNotionをどこまで業務へ広げるかは、Notionのビジネス活用で用途別に整理しています。まずは対象ボードを3枚に絞って試験移行し、整形にかかる実時間を測ってから、全体計画を立てるのが確実な進め方です。

